
皆さんこんにちは!
株式会社グラフィアス、更新担当の中西です。
内装工事は“企画の美しさ”と“現実の財布”を統合する知的スポーツです。良いデザインも支払えなければ実現しませんし、安さだけを追うと体験価値と耐久性が落ち、結局は高くつきます。本回では、原価の構造を理解し、見積書の行間を読み、VE/VA(Value Engineering / Value Analysis)で品質とコストを両立するための実務を、店舗・オフィス・住宅の横断視点で丁寧に解説します。🧮✨
1)原価の構造を“崩して”見る
• 直接工事費:材料費+労務費(職人手間)。
• 共通仮設費:養生・仮囲い・搬入出・仮設電気・仮設照明・仮設トイレ等。
• 現場管理費:現場監督の常駐、工程管理、検査、書類作成、近隣対応、交通費。
• 一般管理費(本社経費)+利益:会社運営費用と適正利潤。
• 諸経費:法定福利費、廃材処理費、諸官庁手数料、夜間・休日割増、届け出関連。
👉 ポイント:見積比較は“総額の高い安い”ではなく、内訳の抜け漏れを見つける競技。A社が安いのは「廃材処理費を入れていない」からかもしれません。抜けが後から“追い金”で増えるのが一番危険です。🧨
2)単価感覚を掴む(目安)
※地域や市況で変動します。ここでは目安レンジを示します。 – 軽量鉄骨下地(壁):~3,000〜5,500円/㎡ – 石膏ボード貼り:~1,500〜2,800円/㎡(厚み・層数で変動) – クロス貼り:~800〜1,800円/㎡(量産品→意匠品で上振れ) – 長尺シート:~3,500〜6,500円/㎡(下地調整の有無で差) – タイル貼り:~8,000〜18,000円/㎡(サイズ・役物で差) – 造作家具:~120,000〜300,000円/m(材・塗装・金物で大幅変動) – 電気配線(照明・スイッチ・コンセント新設含む):~6,000〜12,000円/㎡ – 空調更新(パッケージ×1台):~300,000〜900,000円+配管・電源工事
🔎 使い方:概算フェーズで“桁感”を外さない。大枠の配分(仕上げ3割、設備系4割、造作2割、その他1割 など)を仮置きし、長納期品の確定を先に行うことでブレ幅を縮めます。
3)見積書の“赤ペン”術 ✍️
1. 数量の根拠:図面の仕上げ表・展開図・天伏図と照合。㎡→実測範囲が曖昧な行は要照会。
2. 歩掛り:手間賃の妥当性。特殊納まり(R・斜め・巾木特殊)で歩掛りが跳ねる点に注意。
3. 仮設・養生:共用部エレベーター養生、夜間搬入の立ち会い、発電機持込等のビル要求が反映されているか。
4. 残材・産廃:産業廃棄物マニフェスト費用。重量物(タイル・石)の処理費は嵩む。
5. 諸官庁関連:消防・保健所・設備容量申請。誰がどこまでやるかの切り分けを明文化。
6. 一式表記:高額な「一式」は分解要求。最低限、数量×単価の形に直してもらう。
4)VE/VAの思考法(品質を落とさずコスト最適)🧠
• 代替材:無垢→挽板、石材→磁器質タイル、モルタル塗→左官+保護コート、特注金物→規格スチール+焼付塗装。
• 面積のデザイン:全面タイル→“濡れやすい/見せ場”だけ役物+見切り、アクセントで点の豪華さを作る。
• 工法の置換:現場塗装→工場塗装パネル化、R造作→曲げベニヤ+見切りで簡素化。
• 設備の賢い投資:器具点数を減らし配灯計画で演出。CRIの高い要所照明に投資、その他はベーシックでOK。
• 運用コスト視点:初期安でも清掃性が悪いとLCCで負ける。ワックス不要やノンワックス長尺は人件費削減に効く。
🧩 VEのコツ:体験の核(ファーストビュー、触れる回数の多い部分、写真に映る画角)に予算を集中。その他は“目地ピッチ”と“見切り”で整って見えるディテールを死守します。
5)交渉と契約の勘所 🤝
• 相見積は2〜3社:多すぎると対応品質が落ちる。図面・仕様・条件は同一パッケージで配布。
• 質疑締切:質疑回答書を共通配布。見積差が“仕様誤解”から来ないようにする。
• 固定金額化:変更管理ルール(チェンジオーダー)を契約書に添付。小変更の単価表を先に握る。
• 支払い条件:中間金の有無、出来高払い、出来形証跡(写真・検査記録)を紐づける。
6)ケーススタディ(飲食 50㎡)🍽️
• 前提:客席28席、バック8㎡、天井高2,600mm、既存スケルトン。
• 概算配分:仕上げ 28%/造作 18%/電気 18%/空調換気 24%/衛生 8%/その他 4%(計100%)
• VE例:床タイル全面→客席は長尺+見せ場(入口・カウンター周り)だけ磁器タイル。造作天板は突板+ソフトマット塗装。天井は露出配管+黒染でコスト圧縮。
7)チェックリスト ✅
☐ 見積3社の“抜け”比較表を作成
☐ 高額“一式”を分解し数量根拠を確認
☐ 長納期品(照明・造作・輸入材)を先行確定
☐ 産廃・夜間・養生・諸官庁費の有無確認
☐ VE案を体験核を守る方針で確定
まとめ:見積は“値切り”ではなく“合意形成”。体験価値×耐久×安全の交点を見つけ、将来コストまで含めて意思決定するのがプロの流儀です。💡💬
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見積/VEの“行間”と交渉台本 💬
A. 見積の“抜け”が出やすい項目リスト – 養生(共用部EV/階段/スロープ)、夜間割増、残材・産廃運搬、諸官庁申請費、防火貫通/点検口、仮設電気容量、上下水メーター手配、試験成績書作成。
B. 歩掛り感覚(例) – クロス(量産/L3):120–160㎡/人日、パテ(L5面):20–40㎡/人日、タイル600角:15–25㎡/人日、塗装(マット2回+下塗):60–90㎡/人日。
C. VEマトリクス(例) – 目的=清掃性:床タイル→ノンワックス長尺(初期-15%、LCC-30%) – 目的=耐久:メラミン単色→HPL+エッジABS(天板角Rで欠け防止) – 目的=見栄え:全面石→役物石+擬石塗装(“点豪華”で写真映え)
D. 交渉の台本(相見積3社) – 「本件の評価軸は抜けの少なさと代替提案です。A社は産廃と点検口が詳細、B社は養生が明確、C社は器具表が強い。最終案では三社の強みを一式に統合して再提出をお願いします。」🤝
E. 数量トラップの回避 – 展開図の長さ×高さで壁㎡、天伏図で点検口・器具穴補強、割付図で端部寸法を確定。
F. コスト可視化ダッシュボード(項目/比率) – 仕上28%/造作18%/電気18%/空調24%/衛生8%/その他4% → 月次で見積→発注→出来高を横並び比較。📊
G. ケース:相場から外れた“安い見積”への対応 – 一式分解の要求 → 材料支給の可否 → 納期と人員確認 → 品質保証の条件化。過度な値下げは手戻りコストで高くつくことを説明。
H. 契約条項の必須3点 1) 変更管理(単価表/承認フロー/閾値) 2) 支払と出来形証跡(写真/検査記録) 3) 引渡し書類(竣工図/試験成績/保証範囲)
I. 提案書の“伝わる”図 – 目地ピッチ/見切りライン/照度分布/CO₂推移の4枚で意思決定が速くなる。📑
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